一期一会

帰りのバスで酔っぱらいにからまれた。おっちゃん。年齢的にはむしろおじいちゃんかな。でも元気だったからおっちゃんってことにしよう。酔っぱらってるからろれつが回ってなくて何言ってるかよくわからないんだ。英語の聞き取りをやってるときのように単語の端々をさらいながら内容を理解する。ところどころよくわからないんだけど、でも話はおもしろい。愉快だ。
話を聞いてるとどうやらおっちゃんは周りの人からは「先生」って呼ばれてるらしい。「先生なんですか?」って聞くと「ただのニックネームだよ〜。先に生まれただけだ。」なんてごまかしたけど、やっぱり気になったから何してる人なのか聞いてみると、どうやら舞台の脚本とかやってるらしい。またすごい人にからまれたものだ。
おっちゃんは急に何か思い出したように鞄をごそごそし始め、あぶらとり紙を取り出した。よーじやのあの有名なやつだ。*1おっちゃんはそのよーじやのあぶらとり紙を僕にあげるといって渡して、「それ僕が描いたんだよ」なんて言った。こいつ何物だ。これhttp://www.yojiya.co.jp/描いた人なんだって、このおっちゃん。この誰でも一度は見たことある画を。この酔っぱらいが。
おっちゃんは自分の話しかしてないことに気づいたのか、初めて僕に話を振った。「何やってるの?」「学生です。」「どこ?」「慶應です。」「おー、そしたら僕の後輩だなあ。」なんて。これはまた奇遇。ついでだから僕の方から学部を聞いてみた。答えは「医学部。」「え?」「医学部。」このおっちゃんただ者じゃない。
そうこうしているうちにバスは終点に近づく。するとおっちゃんは僕を酒に誘い始めた。これがめんどくさい。何回断っても食い下がらない。たちの悪い酔っぱらいだ。バスを降りてからも押し問答が続いた。危うくタクシーに乗せられるところだった。でもさすがにおっちゃんもそこらで諦めた。
次はちゃんと飲もうって約束した。
「次」っていつだろうな。