東大新聞より

バイト先で東大新聞を取っているので毎週軽くざっとチェックしているんだけど、今週の記事に養老孟司さんを取材した記事があったんです。その中の養老さんの言葉で一部とても感銘を受けたというか、僕がぼんやり考えていることととても近いことをおっしゃっていたのでちょっと紹介させてください*1

僕は幼いころからずっと、昆虫の研究がしたかった。大学生時代も虫取りに夢中でした。でも、「虫の研究をしたい」と教授に相談したら、医者を本業にして趣味で虫をした方が収入が安定して良いと忠告されたんです。確かに、本当に虫が好きなら、今すぐ研究しなくてもいつか必ず研究しているはず。そう思って大学に勤める間は虫の研究だけに打ち込まず辛抱していました。
―約30年の長い間「辛抱」できたのはなぜですか
目の前の仕事に辛抱することと自己実現と、この二つのバランスが大事なんです。僕は仕事を世間からもらっているという感覚でしたから、社会に対する責務と考えて嫌なことも大抵我慢しました。今の人は、自分に合わないと思ったらすぐに仕事を辞めてしまうようですが、僕は自己実現とは全く別のところで仕事をしていた。それで今でも本郷のキャンパスに行くと暗い気持ちになるんですが(笑)
若い人が考えないといけないのは、自己は常に変化しているということです。自分がやりたいことも変化していく。だから「自己実現」という言葉にはあまり意味がないんです。

僕は仕事=辛抱とは、そこまでは思ってないですけど、やっぱり仕事に辛抱はつきものだし、仕事で自己実現できるなんて人はそういないわけだし。一見仕事というものをネガティブにとらえているようですけど、仕事っていうのは究極的にはやっぱり生活していくために、もっと露骨に言えばお金を得るためにやるわけで、また大きな視点で捉えれば社会生活を営む一個の人間としての義務なのであって、そういう中で「自己実現」するっていうのはなかなか難しいことですよね。
多くの人は仕事というものをある意味ポジティブに考えすぎている部分があるからうまくいかないのかなあと思ったり。

*1:週刊 東京大学新聞2009年4月21日号より一部抜粋