企業会計と人生観

企業会計の一般原則というのがありましてね、財務諸表論を学ぶときには一番最初に習うものなんですが、僕はこの原則がなかなか好きでありまして、というのも、この企業会計原則は企業会計にとどまらず僕らの人生観というのを表象しているようにも思えるからです。まぁ会計というものがそもそも我々人間達の営みから帰納的につくりあげられていったものだから、当然ともいえるんですが、それを実に見事に体系化しているなぁと思うわけです。

1.真実性の原則

平たく言えば、嘘をつくな、って話なんですが、実はもうちょっと深い話があります。企業会計においては、①会計の目的は時代によって目的が異なること、②会計数値には経営者の見積もりが入ること、③会計処理には代替的な処理が認められているものもあることから、真実とは絶対的なものでなくして相対的なものであると言われます。
実際、会計に限らず真実はいつも相対的なものであると僕は思っています。「事実」は客観的で絶対的たりうるかもしれませんが、「真実」というのは(極端な言い方かも知れませんが)我々人間の想像上のものでしかないとも言えます。例えば、天動説はかつては真実として語られていましたが、事実は違います。現在ではこの点、事実と真実は整合していますが、客観的事実に対して真実というのは絶対的たりうるものではありません。
しかし重要なのは絶対的たる事実でなくして、相対的な真実なのです。かつて天動説が真実として語られた時代には太陽が地球の周りを回るべきであり、事実というのはそれほど重要ではありません。そして、あくまで真実は相対的であるからその時代の変化とともに真実の内容も変化して、今では地動説が事実であり真実でもあります。
真実とは何か。それは相対的なものでしか有り得ない。しかしそれでも、いやだからこそ重要なのは事実でなくして真実である。
会計を勉強して初めて考えることができたことでもあります。

3.資本取引損益取引区分の原則*1

これは、財務諸表論的には、もともとあったお金と自分で儲けたお金はちゃんと区別して、もともとあったお金には基本的には手をつけちゃだめですよ、なんていう原則です。株主からの払込資本には手をつけてはいけませんよ、配当とかするのは自分で儲けた剰余金からしてくださいね、という感じです。
これも僕らの人生に当てはめることが出来て、某講師の請け売りですが、「じーちゃんの遺産と自分で稼いだ金は区別しなさい。自分で稼いだ金は使ってもいいけどじーちゃんの遺産にはよっぽどのことがないかぎり手つけるな」なんていう感じです。
あと今思いついた例としては、親からの仕送りには手をつけない、遊ぶ金はバイト代から出す、とかでしょうか。一人暮らしじゃないのでちょっと適当なこと言ってます、ごめんなさい。

4.明瞭性の原則

財務諸表はわかりやすく表示してね、というまぁわかりやすい原則。こんなもの人生にはいくらでもあてはまりますよね。人に見せる文書はわかりやすくなきゃだめですよ、ってとこですね。

5.継続性の原則

一度採用した会計方針はみだりにこれを変更してはいけません、という原則。正当な理由がある場合には、変更する旨、理由、影響を開示して変更することができます。
まぁ一回決めたらコロコロ意見変えないでください、って感じですね。どこかの国の総理大臣に聞かせてあげたい原則です。

6.保守主義の原則

予期される費用や損失はなるべく早く認識して、逆に収益などは遅く認識してください、という原則です。こうすることでなるべく利益を小さめにしようっていうことです。財務諸表っていうのはその会社にお金を投資したり貸したりする人の意志決定の判断材料となりますから、利益の過大計上は危険なんですよね。少し小さめに見積もっておくくらいがちょうどいいってところです。
実際の生活でもそうですよね。受験とかでも保守主義の原則に立つべきですよ。大体何点取れたかっていう見積もりに際してはなるべく厳しめに考えとくのが身のためっていうのは誰しも経験済みなんじゃないでしょうか。ちなみに僕はセンター試験に際して保守主義をとらなかったために痛い目に遭いました←
あと、この企業会計上の保守主義の原則は「過度な保守主義はだめですよ」なんてことも言っているんですが、これもほんとそうですよね。過度に保守主義の立場をとることは真実を歪みかねないですから。例えば、行けるはずの大学に出願しない、なんていうのはちょっと残念ですよね。

重要性の原則*2

重要なものはより正確に*3、重要でないものは簡便に、という原則。
この考え方って本当に大事ですよね。重要性に応じて自分の中で優先順位をつけること。わかっていてもなかなかできなかったりしますよね。でもそもそも全部完璧に、なんて絶対無理なんですから、さほど重要でないことは手を抜かなきゃダメです。疲れちゃいますから。その代わり、重要なことに際しては細心の注意を払って慎重にやるべきです。
まぁ要するに、なんでもいい加減なのは論外ですが、なんでも一生懸命なのもよくなくて、適度な感じでやりましょう、なんてことです。
真面目な方ほど重要性の原則を心にとどめておくといいんじゃないでしょうか。力抜くときは力抜いていいんです。


こんな感じです。こうしてみると会計学もなかなかおもしろいですよね!

*1:2.正規の簿記の原則は特に書くことがなかったので割愛しました

*2:重要性の原則は一般原則には含まれませんが、それと同等の重要性を有しています。なお、7.単一性の原則は割愛します。

*3:正確性に程度の問題はないはずですが、気持ち的な問題で。