生産活動

 このままじゃだめだ。もっと自分で考えなきゃ。自分の頭で。自分の頭を使うことを怠っている。試験勉強ばかりしていると答えのある問題ばかり解いてるから頭が固くなるんだ。だんだん答えのない問題に向き合うのが怖くなるんだ。間違えるのが怖いから答えのない問題には答えられない。でもそんなんじゃ使い物にならない。俺が誰かにとって使い物にならないという前に、俺の頭が俺にとって使い物にならない。答えなんて通常用意されていない。怖がっちゃだめだ。教科書通りの答えでいいのはここまでだ。必要最低限の知識はおおよそ身につけたはず。いや、まだ不十分かもしれない。しかしそれでもいつかは踏ん切りをつけなきゃならない。というか、知識が十分になることなんて有り得ない。いつまでも不十分だ。だからある程度のところで見切りをつけて、インプットからアウトプットにシフトしなきゃならない。アウトプットっていうのはインプットしたことを並べることじゃない。それは単なるインプットの確認だ。アウトプットっていうのはインプットしたものを自分なりに加工して何かを生産することに他ならない。それは答えのない問題に対する自分なりの答えでもある。目の前にある考えるべき問題はたくさんある。自分には「創造」なんてのは柄じゃないと思ってる。創造なんてのは本当にごく限られた人にしか許されないことだと思う。でも「生産」は違う。その気になれば誰でもできる。決定的な違いはモノを無から生み出すか、有から生み出すか、だと思う。僕には無から有を生み出すなんてことはできないけど、もともとあったモノを自分なりに加工することくらいならできるはずだ。できるはずなんだ。ただ今まではそれを怠っていた。答えのある問題、正解不正解をすぐに確かめられる問題しか解いてこなかった。「合ってた」ってすぐ言えることほど楽なことはないし、また「間違ってた」でもすぐに確認できるのは楽なことだ。すぐに修正がきくから。でも目の前に答えが用意されていない問題はそうはいかない。自分の出した答えに責任を持てるのは自分だけだ。でもこれからはそういうところに立ち向かっていかなきゃダメだ。
 自分とあの人との決定的な違いはそこだ。