立身出世

 たまに、ふと、なんで自分はこんなに頑張るのだろうとか思ったりして、立ち止まるときがある。別に頑張ってるとは言ってもそんなたいそうなことはしてないし、自分が頑張りすぎてて虚無感に襲われるとか、全然そういうことではなくて、ただ単純に今こうしてある目標に向かって走る意味とかあるんだろうか、って思ったりする。たしかに、大学生の間にいろいろ勉強して、いい企業に就職する(僕の場合は公認会計士になるということになるけど)方が、給料もたくさんもらえて豊かな暮らしができるということに(基本的に)違いはないから、それを一つの目的としているというのは少なからずある。でも暮らしの豊かさ、贅沢ができるかできないかなんていうのは深く考えてみればそれほど重要なことではない。ニートでお金なくて親のすねかじりながら、ベーシックインカムをあてにしてみたりして、贅沢こそできなくても一日中ネットやゲームをして自由気ままに暮らす、というのも世間体なんかを別とすれば楽しそうなものだ。


 だから、それでもやはり僕が(一言で言えば)「出世したい」と思うのは、単に安定して高収入を得たいというところではなくて、もっと別のところに目的があるのだろうと思った。で、まぁ、それがなんだろうといろいろ考えてみた結果、それは、「すごい人と話したい」っていうあたりなんじゃないかなぁ、などと思い始めている。ただなんとなく、日本を背負って活躍している人、あるいは世界というフィールドで活躍している人、なんでもいいのだけど、とにかく、「スゴイ」人と出会って、お話をしてみたい、という夢というか憧れというか。そんなものかもしれない。


 そしてやっぱりそういうスゴイ人と出会いたかったら、自分もスゴイと言われる人にならなきゃいけない。スゴイ人っていうのは「スゴイ」フィールドで活躍していて、そこから下界に下ってきてくれることなんて基本的にない。会いたかったら自分自身がそのフィールドまで上って行かなきゃいけない。その過程を一言で言い表すのが「出世」という言葉なのかなぁ、と。


 大学に入ってから幾人か、「スゴイ」と思える人に出会った。そしてもっとこういう人に出会いたいと思った。それ以来僕の出世欲はどんどん高まっている。もともと僕は本当に普通の暮らしさえ出来ればそれでいい、という僕らの世代にありがちな「安定指向型」の考えを持っていたけど、今はそれがだいぶ変わりつつある。それでもやはり安定というのは大事だから大きなリスクを冒すようなことは怖いと思っているけど、今はどのような道で出世できるか、などということをいろいろ考えている。


 出世というのは単にカネや権力を欲しがるというようなマイナスな面を意識しがちだけども、やっぱり出世しないと味わえない世界がある。そういう自分よりもすごい人がわんさかいるような世界に、僕は足を踏み入れたい。